お子さんの勉強に、どこまで手を出せばいいのか迷っていませんか?
私が指導でいちばん大事にしているのは、勉強するのは本人で、誰かにさせられるものではないということです。学ぶのは自分だという自覚がないと、授業も宿題も受け身になって、集中できません。
そのため親御さんには、勉強の中身に直接関わることはおすすめしていません。見ていただくのは、テストの点数がどうだったか、くらいで十分だと考えています。
突き放すように聞こえるかもしれませんが、これは私の感覚だけで言っていることではありません。この記事では、親の関わり方と成績の関係を調べた研究を2つ紹介して、そのうえで、私が実際にどうしているかをお話しします。
研究①:中学生の親の関わりを調べた研究50本のまとめ
アメリカの研究者ヒルとタイソンは、中学生(6〜8年生。日本の小学6年〜中学2年くらいの年齢)の親の関わりと成績の関係を調べた研究50本を集めて、まとめて分析しました(メタ分析といいます)。対象はおもにアメリカの中学生で、スペイン・ドイツ・韓国の研究も含まれています。
この研究では、親の関わりを大きく3つに分けています。
② 学校での関わり:学校行事や保護者会に行く、先生と連絡を取る など
③ 学ぶ意味を伝える関わり:勉強の意味や将来とのつながりを話す、期待を伝える、勉強のやり方を話し合う、将来の計画を一緒に立てる など(論文では「アカデミック・ソーシャライゼーション」と呼んでいます)
結果は次のとおりです。数字は「相関係数」といって、成績との関係の強さを表します。0なら関係なし、プラスなら「その関わりが多い家庭ほど成績が高い」、マイナスなら「その関わりが多い家庭ほど成績が低い」という関係です。
同じ「関わる」でも、中身によって差がありました。勉強そのものに手を出すこと(宿題を手伝う)だけがマイナスで、勉強の意味や将来とのつながりを話すことがいちばんプラスだった、ということです。
宿題の手伝いがマイナスになる理由の候補として、著者は、子どもの自主性のじゃまになること、親のプレッシャーが強くなりすぎること、親と学校で教え方が違うことを挙げています。
研究②:プレッシャーをかけて学ばせると、理解が浅くなった
もう一つは、アメリカの小学5年生91人を対象にした実験です(グロルニックとライアン)。子どもたちに社会科の文章を読んでもらう前に、伝え方を3通りに分けました。
- 「読み終わったらテストをします。しっかり覚えているかどうか、採点します。できるだけがんばってください」と伝える(プレッシャーをかける)
- 「読み終わったら内容について少し質問しますが、テストではないし、採点もしません。読みやすいように読んでください」と伝える
- 内容のテストがあることは伝えずに、読んでもらう
結果、採点すると言われた組は、丸暗記した量はいちばん多かったものの、内容の理解はいちばん浅く、読んだ内容への興味も低く、プレッシャーを多く感じていました(内容の理解の得点:採点すると言われた組 3.22、テストではないと言われた組 3.79、テストがあることを知らなかった組 4.02)。1週間ほどあとにもう一度テストすると、採点すると言われた組は、覚えていた量の減り方もいちばん大きくなりました。
プレッシャーをかけて「させる」勉強は、覚えた量は増えても、理解と興味がついてこない。私が「勉強するのは本人」とお伝えしているのは、ここにつながっています。
うちでやっていること
2つの研究と照らし合わせると、私が親御さんにお願いしていることは、次の3つです。
・見ていただくのは、テストの点数くらいで十分
・プレッシャーをかけて勉強させない(研究②)
そのかわり、勉強の中身と進め方は、私と生徒本人で決めます。
- テストで思うような点が取れなかったときは、「じゃあ、どうするか」を本人と話し合って、次のやり方を一緒に考えます(研究①の「勉強のやり方を話し合う」にあたります)
- 志望校や、楽しそうだと思える仕事・夢から逆算して、何をいつまでにやるかを考えます。志望校は途中で変わってもかまいません(研究①の「将来の計画を一緒に立てる」にあたります)
失敗は、本人のものにしておく
親御さんに先回りしないでいただきたいのには、もう一つ理由があります。先回りしてあげると、失敗が本人のものではなくなってしまうからです。
- 子どもは経験が浅いぶん、失敗してはじめて「次はこうしよう」と考えられるようになります
- ここでいう失敗は、目の前の1問をまちがえることではありません。テストで思うような点が取れなかったり、受験で思うような結果が出なかったり、というくらいの大きさのことです
- 親御さんが先回りして失敗を避けさせると、その機会そのものがなくなり、いつまでたっても自立できません
- 自分でやって、自分で失敗して、はじめて「じゃあ、どうするか」の話ができるようになります
学校のことも、コントロールしようとしない
学校での振る舞いについても、親御さんがコントロールするのは難しいと考えていただいた方がいいかもしれません。子どもには子どもどうしの社会があって、まずはそこで自分の居場所を守り続けることで精一杯だからです。
それでも見ていられないときは
とはいえ、見ていられない気持ちはよく分かります。うちの生徒さんの親御さんも、最初はだいたいそうです。
どこまで見ていいか分からない、という方は、学年と今の状況をお問い合わせから教えていただければ、うちでやっている線引きをお伝えします。
参考文献
- Hill, N. E., & Tyson, D. F. (2009). Parental involvement in middle school: A meta-analytic assessment of the strategies that promote achievement. Developmental Psychology, 45(3), 740–763.(本文)
- Grolnick, W. S., & Ryan, R. M. (1987). Autonomy in children's learning: An experimental and individual difference investigation. Journal of Personality and Social Psychology, 52(5), 890–898.(本文)
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