国語が苦手なお子さん、こんなことはありませんか?
- 問題文を最後まで読んでいるのに、何を聞かれているか答えられない
- 国語だけでなく、算数や数学の文章題になると急に手が止まる
- 本をあまり読まず、長い文章を見ると嫌になってしまう
- 「うちの子は国語のセンスがないから」と思っている
ひとつでも当てはまったら、それはセンスの問題ではないと思っています。
目に入っているだけで、頭に入っていない
よくあるのは、文章が目に入っているだけで、頭に入っていない状態です。
読んでいないわけではなく、目は最後まで通っています。でも「今、何が書いてあった?」と聞くと、答えられないことが多いです。
文章題でも同じです。読んでいるようで、読んでいない。「読みました」と言っても、頭の中で音読しただけ、という子が多いです。同じ「読む」でも、種類が違うのです。
「今、何が書いてあった?」に答えられなければ、それはセンスではなく、「情報が入っていない」という、はっきりした状態です。どこで止まっているかさえ分かれば、あとはそこを埋めていくだけです。
文章題を解いている子どもの目の動きを記録した研究に、これとよく似た結果があるので、紹介します。
研究:文章題が苦手な子の「読み方」を、目の動きで調べた
オランダの研究者ファン・デル・スホートらは、オランダの小学校の5・6年生(10〜12歳)60人に文章題を解いてもらい、そのあいだの目の動きを専用の装置で記録しました。60人のうち、文章題の間違いがいちばん少なかった20人(以下「得意な子」)と、いちばん多かった20人(以下「苦手な子」)を比べています。
使われたのは、次のような問題です(論文の例を訳したものです。店の名前はA・Bにしています)。
これは、Bのお店より2ユーロ安い値段です。
Bのお店で4本買うと、いくらになりますか?
(答え:7+2=9、4×9=36)
「安い」と書いてあるので、つい引き算をしたくなる問題です。でも、安いのはAのお店の方です。Bのお店の値段は7+2=9ユーロで、言葉は「安い」なのに、必要なのはたし算です。
論文では、このように言葉と計算の向きが逆になっている問題(逆向き)と、「Bのお店では、ワインがAのお店より2ユーロ安い」のように向きがそろっている問題(同じ向き)を比べています。「高い」を使った問題でも、同じように2つの形を作りました。逆向きの問題でよくある間違いは、「安い」「高い」という言葉につられて、逆の計算をしてしまうことだそうです。
1人が解いたのは、それぞれの形で2問ずつです(1問は「2ユーロ安い」のような差の問題、もう1問は「〜倍」を使った問題)。計算そのものは、途中の答えが10より小さく、最後の答えが14〜40になるように作られていて、むずかしいものではありません。
結果は次のとおりです。図の数字は、間違えた割合です(増やす計算=たし算・かけ算、減らす計算=ひき算・わり算)。
苦手な子は、もともと間違いの多い20人なので、どの形でも間違いが多いのですが、「安い」で逆向きの問題では、40問中39問を間違えていました。同じ形の問題で、得意な子の間違いは20%でした。
しかも、この形で必要なのは、ひき算・わり算よりもやさしい、たし算・かけ算の方です。計算のむずかしさでこの結果が出たとは考えにくい、と著者も書いています。
苦手な子は、「安い」の文で読み返しが増えなかった
この研究では、問題文の中の「数字」「高い・安いの言葉」「店の名前」を、それぞれ何回、どれくらいの時間読み返したかも調べています。
- 苦手な子も、「高い」の問題では、逆向きの形になると読み返しが増えていました。逆向きだからといって、間違いが増えることもありませんでした(どちらの形でも6割ほど間違えてはいます)
- ところが「安い」の問題では、逆向きの形でも読み返しがほとんど増えず、40問中39問を間違えました
著者は、「『安い』のような言葉が入っている問題では、苦手な子は、答えに必要な所(数字・言葉・店の名前)を読み返そうとしなくなっているようだった」と書いています。
論文では、文章題の解き方を2つに分けて考えています。1つは、問題の状況(どちらのお店が安いのか)を頭の中に思い浮かべてから計算する解き方。もう1つは、数字と「高い・安い」のような言葉だけを拾って、そのまま式にする解き方です。後の方だと、逆向きの問題では逆の計算をしてしまいます。
著者は、苦手な子も状況を思い浮かべる解き方ができないわけではなく、それができていたのは「高い」の問題のときで、「安い」の問題ではできていなかった、と結論しています。そして、その違いは、「安い」の逆向きの文を読み解くのに必要な、読む力に関わる何かが足りないせいかもしれない、としています。
読解力の点をそろえると、違いははっきりしなくなった
苦手な子たちは、オランダの小学校で使われている標準の読解力テストの点も、頭の中に一時的に覚えておく力(ワーキングメモリ)の点も、得意な子より低めでした。
そこで読解力の点をそろえて計算し直すと、ここまで見てきた得意な子と苦手な子の違いは、はっきりしなくなりました。一方、ワーキングメモリの点をそろえても、違いは弱まりませんでした。著者は、「安い」のような言葉を読み解くことには、読む力全体が関わっているようだ、と書いています。
目は文章の上を通っているのに、逆向きの文でも読み返しが増えないまま答えて、40問中39問を間違える。私が「目に入っているだけで、頭に入っていない」と呼んでいる状態と、よく似ていると思います。そしてこの研究でも、それは計算のむずかしさではなく、読む力と関係していました。
・得意な子と苦手な子は、この研究の問題での間違いの多さで分けています。そのため、グループ全体の間違いの数に差があるのは当然で、見るべきは「どの形の問題で、どう違ったか」の方だ、と著者も書いています。
・統計ではっきりした差と言えるかどうか、ぎりぎりの所もありました。著者自身も、差のいくつかは小さかったと書いています(苦手な子の間違いが97.5%で、それ以上広がりようがなかったことも一因、としています)。
・読解力との関係は、同じ時期の点どうしを比べたものです。読む練習をすれば文章題ができるようになる、ということまで確かめた研究ではありません。
うちでやっていること
研究の著者は、文章題の教え方では、問題の状況を思い浮かべることだけでなく、「安い」のような言葉をどう読み取るか、という言葉の面も大事にするべきだ、と書いています。私がやっていることも、ここにつながっています。
・何が分からないのかを、自分で説明してもらう:引っかかりそうな所を、1つずつ聞いていきます。自分の言葉で言ってもらうのが大事です
・頭の中だけで考えず、分かっている事実を書き出す:頭の中だけで考えると、いろいろなことを覚えておくのに力を取られて、考えることに力を使いきれないからです
・止まっている所を埋める:どこで止まっているかさえ分かれば、あとはそこを埋めていくだけです
ご家庭でも、教科書やワークの文章を1つ読んでもらったあとに、「今、何が書いてあった?」と一言聞いてみてください。答えられなければ、センスではなく「情報が入っていない」という、はっきりした状態です。
どこで止まるか、教えてください
「うちの子はここで止まります」という所があれば、学年と、どんな文章や問題で止まるかを、お問い合わせから教えていただけたら嬉しいです。うちでやっている確かめ方をお伝えします。
参考文献
- van der Schoot, M., Bakker Arkema, A. H., Horsley, T. M., & van Lieshout, E. C. D. M. (2009). The consistency effect depends on markedness in less successful but not successful problem solvers: An eye movement study in primary school children. Contemporary Educational Psychology, 34(1), 58–66.(本文)
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