「ケアレスミスさえなければ」と、つい言ってしまうことはありませんか?
意識していただきたいのは、テストではケアレスミスも実力として採点される、ということです。分かっていても、分かっていないのと同じ0点になります。
厳しく聞こえるかもしれませんが、実力の問題だと考えると、直し方が見えてきます。
この記事では、間違えた問題の直し方に関わる研究を2つ紹介して、そのうえで、うちでやっている直し方を3つお話しします。
「ケアレスミスだから大丈夫」は、もったいない
「ケアレスミスだから大丈夫」と思ってしまうのは、とてももったいないことです。分かっているのに、分かっていないのと同じ評価になるからです。テストは厳しいもので、最後の1秒まで1点を追うものだと私は考えています。
「うっかり」で片づけてしまうと、同じミスが何度でも出てきます。ケアレスミスにも、原因があるからです。ミスが多くなりやすいのは、たとえば次のような子です。
- 頭の回転が速い子:頭の中だけで計算を進めて、すぐに答えを出してしまう
- その単元の演習が足りていない子:解き方を思い出しながら解くので、ミスに気を配るところまで集中力が回らず、時間も足りなくなる
- 自分でミスの可能性を増やしている子:計算の順番を工夫しない。何を計算するのかや、計算したことをメモに書かない
どれも、実力の問題として直していくことができます。
研究①:テストで間違えた問題から「教訓」を書いた中学生
東京大学の柴里実さんは、中学生が数学の定期テストで間違えた問題から何を学んだかと、そのあとの点数との関係を調べました。
対象は、ある県立の中高一貫校(学力は中程度・入学に選抜試験あり)の生徒80人です。研究者と学校の先生が協力して、中学1年生のときから「教訓帰納(きょうくんきのう)」という勉強法の使い方を指導してきました。教訓帰納は、問題を解いたあとに、そこから学んだことを「教訓」として言葉にする勉強法です。調査をしたときには、生徒たちは中学2年生になっていました。
調査では、定期テストで正答率が30%以下だった4つの問題(因数分解・乗法公式の利用・場合の数・確率)について、間違えた生徒に、次のことを考えて書いてもらいました。
書かれた教訓は、「自分の間違いに合っているか」「次の問題にも使える知識になっているか」という見方で、5段階で評価されました。
例「(a+b) が使えるように公式を使って変形すると、2ab がいらなくなるので引く」
レベル4:自分の間違いに合っていて、同じ問題に使える具体的な手順を書いている
例「途中で M だけじゃなくて、2M でくくり出す」
レベル3:自分の間違いを具体的に言っているだけ
例「3行目のところで計算ミスした」
レベル2:自分の間違いには合っていないが、問題に関係する知識を書いている
例「とりあえず同じものがあったら M で置き換える」
レベル1:問題に関係のない、心がけや感想に近いもの
例「こういう問題は瞬発力が大事」
そして、教訓を書いた用紙を回収してから7日後の数学の授業で、予告なしに、4つの問題の数字を変えた「同じ型の問題」を解いてもらい、途中式を3点満点で採点しました。分析の対象は65人です(それぞれの問題は、その問題を間違えた生徒だけで分析しています)。
結果は次のとおりです。
・場合の数:関係は見られなかった(約8割の生徒がレベル4か5の教訓を書いていて、差が出にくかった可能性がある、と著者)
・確率:はっきりした関係とまでは言えなかった
因数分解の問題(62人)について、論文の図から人数を数えると、レベル5の教訓を書いた14人のうち10人は、定期テストのときより2点以上伸びていました。いちばん人数の多かったレベル2の34人では、2点以上伸びたのは4人で、21人は点が伸びていませんでした(定期テストのときと同じか、それより低い点)。
著者は、因数分解の問題で、式を展開してしまって間違えた生徒の例も紹介しています。この生徒が書いた教訓は、「計算が複雑なときは、どれだけ簡単にできるかが大事!カッコの中で共通している文字を探して、置き換えて考えよう。最後にもとに戻すことに注意する」というものでした。問題に関係のある内容ではありますが、「自分が展開をしてしまった」という間違いの指摘も、「共通因数をくくり出す」という直し方も入っていないので、レベル2と評価されています。7日後の問題でも、この生徒は共通する式を文字に置き換えたあと、また式を展開してしまい、同じ間違いをくり返していました。式を展開してしまう間違いにレベル2の教訓を書き、7日後にも同じ間違いをくり返した生徒は、ほかにも11人いたそうです(著者は、これは事例として見た結果だとことわっています)。
因数分解と乗法公式の問題では、自分の間違いに合わせて、次に使える知識を言葉にできた生徒ほど、7日後の点が高かった、ということです。私がケアレスミスを「うっかり」で終わらせないようにしているのは、ここにつながっています。
研究②:1文ずつ自分に説明しながら読んだ中学2年生
もう一つは、アメリカの研究者チーらの実験です。公立中学校の中学2年生24人(生物の授業はまだ受けていない生徒)に、高校の生物の教科書から取った「人の血液の循環」の文章(101文)を読んでもらいました。
- 14人には、1文ずつ声に出して読み、そのたびに、その文から新しく分かったことや、それまでに読んだこととのつながりなどを説明してもらいました
- 残りの10人には、同じ文章を2回読んでもらいました
読む前と読んだあとにテストをして比べると、正答率の伸びは、説明した組が32%、2回読んだ組が22%でした。文章に直接は書かれていないことを、ふだんの知識も使って考えないと答えられない難しい問題に限ると、22.6%と12.5%で、差はさらに大きくなりました。
場面は違いますが、「1つずつ区切って、自分の言葉で説明する」という形は、うちでミスを直すときのやり方と同じです。
うちでやっている直し方
うちでやっているのは、次の3つです。
② 間違えた理由を数えて、いちばん多いものから直す
③ よく間違える計算は、毎日少しずつ解いて、手になじませる
① 1行ずつ「どこから来たのか」を説明してもらう
いちばん重要だと考えているのが、これです。説明できるかどうかを見ます。たとえば、次のような計算です。
3x − (x − 5) = 11
3x − x − 5 = 11
2x = 16
x = 8
3x − (x − 5) = 11
3x − x + 5 = 11
2x = 6
x = 3
2行目の「−5」は、どこから来たのか。かっこの前のマイナスは、かっこの中の −5 にもかかるので、−×(−5) で「+5」になります。1行ずつ「どこから来たのか」を説明してもらうと、説明できない行が見つかります。そこが、ミスの出どころです。
研究①でいえば、「3行目のところで計算ミスした」と場所が言えるだけでは、レベル3です。その数字や符号がどこから来たのかまで説明できれば、次に何に気をつければいいのかも見えてきます。
② 間違えた理由を数えて、いちばん多いものから直す
ミスにも、符号、写し間違い、単位、問題の読み違いなど、いろいろな種類があります。間違えた理由を集計して、いちばん多いものから優先して直します。直す順番は、数で決めます。
③ よく間違える計算は、毎日少しずつ解いて、手になじませる
頭で分かっているだけの段階だと、計算そのものに集中力を取られて、問題をよく読んだり見直したりするところまで手が回らないことが多いです。よく間違える計算は、毎日少しずつ解いて、見た瞬間に解ける状態まで手になじませます。計算に集中力を取られなくなったぶん、問題を読むことや見直すことに、手が回るようになります。
お子さんのミスは、どんな種類が多いですか?
符号、写し間違い、単位、問題の読み違い。お子さんのミスは、どんな種類が多いでしょうか。学年と一緒にお問い合わせから教えていただければ、うちでやっている直し方をお伝えします。
参考文献
- 柴 里実 (2023). 問題解決の失敗場面における学びの質とその後の問題解決との関連の検討――定期テスト後の教訓帰納方略の利用に着目して――. 教育心理学研究, 71(4), 319–334.(本文)
- Chi, M. T. H., de Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477.(本文)
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