お子さんに「分かった?」と聞いて、「うん」と返ってきたことはありませんか?
その「うん」には、本当に分かった時のものと、分からないまま先に進みたい時のものが混ざっています。見た目では、ほとんど区別がつきません。
なので、うちではその「うん」を、そのままにしないようにしています。意識しているのは、説明できて、はじめて「分かった」ということです。
これも私の感覚だけで言っていることではありません。この記事では、「分かっているつもり」を調べた研究を紹介して、そのうえで、うちで「分かった」をどう確かめているかをお話しします。
答えを見て納得しても、解けないことは多い
答えや解説を見て「なるほど」と納得しても、実際に自分で解いてみると解けない、ということが意外と多いです。納得できたことと、自分で説明できること・自分で解けることは、別のものです。
そのため、「分かった」かどうかは、本人の返事ではなく、次の2つで確かめています。
- どうしてそうなるのかを、自分の言葉で説明できるか
- 何も見ずに、もう一度解けるか
公式も同じで、大事なのは理由です。理由が分かっていれば、公式を使わずに解いたり、自分で公式を導いたりすることができます。
反対に、伸びないのは、分からないところをそのままにして先に進むことです。解説の中の言葉が分からないまま読み飛ばしてしまうのも、同じです。
研究:説明しようとしてはじめて、「分かったつもり」に気づく
アメリカのイェール大学の研究者ローゼンブリットとカイルは、論文のはじめに「頭の中でははっきりしていて完全に思える考えも、紙に書き出そうとすると、とたんに大きな穴や食い違いが見つかることがよくある」と書いています。そのうえで、「分かっているつもり」を調べる12の研究を行いました。
説明を書いてもらうと、自分の評価が下がった
最初の実験の参加者は、イェール大学の大学院生16人(研究1)と学部生33人(研究2)です。ファスナー、水洗トイレ、シリンダー錠、ヘリコプター、クオーツ時計、ミシンなど、身近な物の「仕組み」をどのくらい分かっているかを、次の順に、7段階(1=浅い、7=深い)で自己評価してもらいました。
② 説明を書く:そのうち4つについて、最初から最後まで1段階ずつ、どうして次の段階につながるのかが分かるように、仕組みを書いてもらう(つながりが分からない所は「GAP(すき間)」と書く)。そのあと、つけ直す
③ 質問に答える:「鍵を使わずにシリンダー錠を開けるには、どうすればいいか」「空中で止まっているヘリコプターが前に進むには、どうするか」のように、仕組みを本当に分かっていないと答えられない質問に答えて、つけ直す
④ 専門家の説明を読む:専門家の説明を読んで、最初の自分の理解がどのくらいだったかを、つけ直す
学部生33人の自己評価の平均は、次のように変わりました。
・② 説明を書いたあと:3.10
・③ 質問に答えたあと:2.49
・④ 専門家の説明を読んで、最初の自分をふり返ると:2.62
説明を書こうとしただけで、自分の理解の評価が下がりました。大学院生でも同じように下がっています。実験のあとの聞き取りでは、多くの参加者が、思っていたよりずっと分かっていなかったことに、本当に驚いていたそうです。
選ばれた大学の学生だけの話ではないかを確かめるために、入学の選抜がきびしくない州立大学の学生16人でも調べていて(研究3)、同じように下がりました。別の物の組み合わせで調べても(研究4)、同じでした。
下がったあとの評価の方が、実際に近かった
では、評価が下がったのは、ただ自信をなくしただけなのでしょうか。これを確かめるために、別の学部生12人に、研究2の参加者が書いた説明を読んでもらい、同じ7段階で評価してもらいました(研究5)。
その評価の平均は2.72でした。本人たちの最初の自己評価(3.89)や、説明を書いた直後の評価(3.10)よりはっきり低く、質問に答えたあとの評価(2.49)や、専門家の説明を読んだあとの評価(2.62)とは、はっきりした差がありませんでした。著者は、参加者は弱気になったのではなく、自分の理解をより正確につかめるようになったのだ、と述べています。
さらに、最初に「あとで説明を書いてもらい、質問にも答えてもらいます」と予告しておいた実験(研究6・学部生31人)でも、下がり方は小さくなったものの、質問に答えたあとの評価は、最初よりはっきり下がりました。
どんな知識でも起きるわけではない
この「分かったつもり」は、どんな知識でも同じように起きるわけではありませんでした。同じやり方で調べると、国の首都(事実の知識)では下がり方が小さく、クッキーの作り方や蝶ネクタイの結び方のような手順や、映画のあらすじでは、書き出しても評価は下がりませんでした。一方、地震の起こり方や虹のでき方、潮の満ち引きのような自然現象では、物の仕組みと同じように大きく下がりました。著者は、「どういう仕組みで、なぜそうなるのか」を説明する知識で、とくにこの思い込みが強いとまとめています。
うちでやっていること
うちで「分かった」を確かめるためにしていることは、次の4つです。研究と重なるところは、かっこの中に書いておきます。
・手が止まったら、何が分からないのかを自分で説明してもらう
・引っかかりそうなところを、1つずつ聞いていく(研究の③「本当に分かっていないと答えられない質問」にあたります)
・最後に、何も見ずにもう一度解けるかを確かめる
研究で「分かったつもり」がとくに大きかったのは、「どういう仕組みで、なぜそうなるのか」を説明する知識でした。私が、答えが合っているかだけでなく「どうしてその式になるのか」を聞いているのは、ここにつながっています(ただし、研究は勉強の問題で確かめたものではありません)。
また研究では、説明を書いた直後の自己評価(3.10)は、ほかの人がつけた評価よりまだ高く、質問に答えたあと(2.49)になって、ほかの人の評価とはっきりした差がなくなりました。説明してもらうだけで終わらせず、引っかかりそうなところを1つずつ聞いていくのは、ここにつながっています。
遠回りに見えますが、分かったことにして先に進まないのが、結果としていちばん速いと思っています。
「分かった」と点数が合わないと感じたら
お子さんの「分かった」と、テストの点数が合わないと感じることはありませんか? 学年と教科をお問い合わせから教えていただければ、うちでやっている確かめ方をお伝えします。
参考文献
- Rozenblit, L., & Keil, F. (2002). The misunderstood limits of folk science: An illusion of explanatory depth. Cognitive Science, 26(5), 521–562.(本文)
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