定期テストはそれなりに取れるのに、模試や実力テストになると急に取れない。こんなことはありませんか?
- 範囲が決まっていれば、覚えて何とかなる
- 初めて見る問題になると、何から手をつけていいか分からない
- 前の学年の単元が出ると、まったく歯が立たない
- 結果を見て落ち込むか、見ないふりをするかのどちらか
ひとつでも当てはまったら、まだ「知っている解き方」が足りていないだけかもしれません。
初めて見る問題と、前の学年の単元
定期テストは範囲が決まっているので、覚えて何とかなることもあります。けれど模試や実力テストでは、初めて見る問題や、前の学年の単元も出てきます。
初めて見る問題に強くなるには、解き方のパターンをいくつ知っているかが大きいと思っています。図形などは特にそうです。図形はとにかく経験で、いくつのパターンを知っているかで、解けるか解けないかが決まります。
証明も同じです。証明が書けない子は、そもそも証明の流れを知らないことが多いです。模範解答を5個くらい本気で分析すれば、何を書いているのかが分かるはずです。あとは型にはめるだけです。
ただし、型を覚えればそれでいい、というわけではありません。多くの子は、「これはどういうことかな?」と最初に考えた方がいいと思います。一方で、丸暗記で大丈夫な場合もあります。公式を使ってたくさん解いていくうちに、その意味が分かってくる子もいます。
そしてもう一つ大事なのが、前の学年の単元を、曖昧なまま残さないことです。
「手本から解き方の流れを学ぶこと」と「前の学年の単元」について、参考になる研究を2つ紹介します。
研究①:証明の「手本」にじっくり取り組んだクラスは、証明のテストの点が高かった
ドイツの研究者ハインツェ、ライス、グロースは、ドイツの8年生(日本の中学2年生くらいの学年)243人を対象に、証明の学び方を比べました。
全員が、8年生のはじめに、ふつうの授業で図形の証明の単元を学びます。そのあと、クラスごとに2つの組に分かれました。
ふつうの授業の組(4クラス・93人):証明について、いつもどおりの授業を受ける
ここでいう「手本」は、完成した証明が書いてあるだけのものではありません。架空の生徒2〜3人が問題に取り組む物語になっていて、問題を調べる → 予想を立てる → 使えそうな根拠を探す → 根拠をつないで証明にまとめる、という流れをたどれるようになっています。途中には、穴うめ、図をかく、角や辺の長さをはかる、自分の予想を書く、最後にふり返る、といった作業が入っていて、自分で説明しながら読み進めるように作られていました。
論文では、手本で学ぶことの考え方を、こう説明しています。自分で問題を解いている最中は、それだけで頭がいっぱいになり、ほかの問題にも使える解き方の型を身につける余裕が残りにくい。すでに解かれている手本なら、その余裕が生まれるかもしれない。ただし、手本を使えば必ず身につくわけではなく、自分でどれだけしっかり説明しながら取り組むかが大事だ、という研究も紹介されています。
学んだあと、全員が証明のテストを受けました。
学ぶ前のテストでは62.3%と58.5%で、2つの組にはっきりした差はありませんでした。学んだあとの差を、著者は「中くらいの効果」としています。差が大きかったのは、筋道を組み立てる問題、とくに複雑な証明で、図形の基本の知識を問う問題では、はっきりした差がありませんでした。
また、学ぶ前のテストの成績で上・中・下に分けると、差が大きかったのは、下と真ん中の子でした。
・成績が上の子では、はっきりした差はありませんでした。著者は、手本の内容が、上の子にはある程度分かっていることだったのかもしれない、と考えています。
・テストは学んだすぐあとのもので、どのくらい長く残るかは、この論文ではわかりません。
私が「解説を見て1行ずつ納得する」「模範解答を本気で分析する」と言っているのも、眺めるだけではなく、手を動かしながら、ひとつずつ納得していく、ということです。この研究の手本も、読むだけでなく、自分で手を動かして確かめながら進めるものでした。
ただし、この研究で分かったのは、証明の手本3つにじっくり取り組んだクラスの方が、そのあとの証明のテストの点が高かった、ということまでです。模試の点や、「知っている解き方の数」を調べたわけではありません。
研究②:小学生のころの分数とわり算の力が、5〜6年後の高校の数学と関係していた
もう一つは、前の学年の単元についての研究です。アメリカとイギリスの研究者シーグラーらは、同じ子どもたちを何年も追いかけて調べた、次の2つの大きなデータを分析しました。
- イギリス:1970年のある1週間に生まれた子どものうち3,677人(10歳と16歳のときの数学のテスト)
- アメリカ:全国の子どもを代表するように選ばれた599人(10〜12歳と、15〜17歳のときのテスト)
小学生のころ(10〜12歳)の算数の力を、分数・たし算・ひき算・かけ算・わり算の5つに分けて、どれが5〜6年後の高校の数学(代数と、数学全体の点)と関係しているかを調べています。そのとき、ほかの算数の力や知能、ワーキングメモリ(頭の中に一時的に情報を置いておく力)、家庭の収入や親の学歴は、統計の上でそろえています。
数字は、0なら関係なし、大きいほど関係が強いことを表します。たとえば分数の0.15は、ほかの条件をそろえたうえで、10歳のときの分数の力が「ばらつきの幅(標準偏差)」1つ分高い子は、16歳の代数の力もその幅の0.15個分高い、という関係だった、という意味です。
アメリカのデータでも、分数の関係はイギリスとほぼ同じくらいの強さで、わり算は5つの中でいちばん強く関係していました。どちらの国でも、分数とわり算は、たし算・ひき算・かけ算よりも、あとの数学と強く関係していました。
著者によると、わり算も分数と同じように、身についていない生徒の割合が高いそうです。アメリカの高校生に「時速400マイルの飛行機で、1,400マイル離れたおばあちゃんの家まで何時間かかるか」を聞くと、正しく答えられたのは56%でした。
著者は結論として、高校の代数や数学の理解を大きく伸ばすには、分数とわり算が身についていることが必要だ、と書いています。
・分かったのは、分数とわり算についてです。前の学年のどの単元でも同じ、とまでは言えません(たし算・ひき算・かけ算の関係は弱めでした)。
・イギリスの16歳の数学の点は、テストの時期に先生たちのストライキがあったため、調査の対象になった世代全体の21%しかそろっていません(偏りは小さいとする分析を、著者は示しています)。
・対象は、1970年生まれのイギリスの子どもと、1997年と2002年にテストを受けたアメリカの子どもです。
前の学年で曖昧な単元を残さない、という私のやり方と同じ向きの結果です。ただ、この研究が示しているのは、分数とわり算が身についていたかどうかが、何年もあとの数学と関係していた、ということまでです。戻って学び直せば取り戻せる、と確かめたわけではありません。
うちでやっていること
2つの研究と照らし合わせながら、うちでやっていることをまとめると、次の4つです。
・範囲が終わった単元から、過去問をどんどん使う
・前の学年で曖昧な単元は、そこまで戻って残さない
・模試が悪かった時は、落ち込みすぎず、気にしなさすぎず、まず分析する
解けなかった問題は、何も見ずにもう一度解く
間違えたら、すぐに直します。できなかったら、もう1回確認して、手を動かしながら、ひとつずつ納得していきます。そのあとで、何にも頼らずに解きます。
答えだけ見て納得しても、意外と解けないことが多いからです。本当に解けるかどうかは、実際に解いて確かめます。
過去問は、範囲が終わった単元から、どんどん使っていいと考えています。
前の学年の単元は、戻って埋める
受験勉強は、始めるのが早いほどいいと思っています。ただ、学年が低いうちは、とにかく置いていかれないことを意識します。曖昧な単元は残しません。前の学年で曖昧な単元があれば、そこまで戻ります。
模試は、受けた日に分析する
模試が悪かったときは、まず分析します。落ち込みすぎても、気にしなさすぎてもいけません。
大抵の模試は、結果が返ってくるのが遅すぎて、返ってくる頃には忘れてしまっています。だから、受けたその日のうちに調べて、やり直します。
直す順番は、数で決めます。間違えた理由を集計して、いちばん多いものから優先して直します。何を直すのか、敵をはっきり決めてから取りかかる、ということです。
そして、分析のあとにやることは、結局テストです。テストで点を取るなら、テストをするしかありません。
点数の差が大きいときは
「定期テストと模試の点数の差が大きい」というお子さんがいたら、学年と教科をお問い合わせから教えていただけたら嬉しいです。うちで最初にやっていることをお伝えします。
参考文献
- Heinze, A., Reiss, K., & Groß, C. (2006). Learning to prove with heuristic worked-out examples. In J. Novotná, H. Moraová, M. Krátká, & N. Stehlíková (Eds.), Proceedings of the 30th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education (Vol. 3, pp. 273–280). Prague: PME.(本文・第3巻をまとめたPDFの281〜288ページ)
- Siegler, R. S., Duncan, G. J., Davis-Kean, P. E., Duckworth, K., Claessens, A., Engel, M., Susperreguy, M. I., & Chen, M. (2012). Early predictors of high school mathematics achievement. Psychological Science, 23(7), 691–697.(本文)
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