親子で勉強すると、だいたいこうなりませんか?
- 「勉強しなさい」と言うと、返ってくるのは反抗的な返事だけ
- スマホを見ながらやっているのを注意したら、そこから喧嘩になる
- 点数が思ったより低くて、つい「ちゃんと見直したの?」と言ってしまう
- 気づくと、勉強の話が片づけや夜ふかしの話になっている
- しかも、たいてい矢面に立つのはお母さん
ひとつでも当てはまったら、それは相性の問題ではないと思っています。
教える役を引き受けると、「なんで分からないの?」が出てしまう
教える役を引き受けると、どうしても「なんで分からないの?」が出てしまいます。これは、近い人ほど出やすいところです。
うちが親御さんにお伝えしているのは、勉強の中身からは少し離れていただく、ということです。見ていただくのは、テストの点数がどうだったか、くらいで十分です。教える役のところだけ、外に出してしまうのも手だと思っていただけたらと思います。
私が指導でいちばん大事にしているのは、勉強するのは本人で、誰かにさせられるものではないということです。勉強は、親御さんのテストではありません(【指導の考え方①】でもお話ししました)。
この記事では、前回も紹介した研究を、今回は「宿題の手伝いは、なぜうまくいかないことがあるのか」という面から読み直して、そのうえで、私が親御さんにお願いしている線の引き方をお話しします。
研究:宿題の手伝いは、なぜうまくいかないことがあるのか
前回の記事で、アメリカの研究者ヒルとタイソンの研究を紹介しました。中学生(6〜8年生。日本の小学6年〜中学2年くらいの年齢)の親の関わりと成績の関係を調べた研究50本を集めて、まとめて分析したものです。
親の関わりは、全体としては成績とプラスの関係でした。ただ、宿題の手伝いだけは、成績とマイナスの関係でした(相関係数 −0.11。マイナスは「手伝っている家庭ほど成績が低い」という関係です)。ここでいう「宿題の手伝い」には、宿題を教えることだけでなく、宿題を見張ったり、チェックしたりすることも含まれています。
今回は同じ論文から、この結果を著者たちがどう考えているかを見ていきます。
中学生の時期は、親子の関係が変わっていく
著者は論文のはじめで、これまでの研究をもとに、中学生の時期をこう整理しています。
- 自分で考えて決める力や、自分の成功や失敗から学んで次に生かす力が伸びていく。そのため、宿題を直接手伝うような関わりは、必要とされることが少なくなり、効果も小さくなるのではないか
- 親子の関係は、親が上から決める形から、お互いに話し合う形へ変わっていく。子どもが親の言うことに疑問を持つようになり、親と子の役割や期待を見直すことが必要になる。親の影響は、直接よりも間接的なものになっていくことが多い
著者があげている、3つの理由の候補
著者は結果と考察の中で、宿題の手伝いが成績とマイナスの関係になりうる理由として、次の3つをあげています。
② 親のプレッシャーが強くなりすぎる
③ 親と学校とで、内容の教え方が違う
この研究は、親子の喧嘩そのものを調べたものではありません。それでも①と②は、冒頭にあげたあるあると重なるところがあるように思います。
著者は、もう一つの可能性もあげています。成績がふるわないから、親が宿題を手伝うようになる、という逆の向きです。そうだとすると、手伝いが成績を下げていなくても、手伝っている家庭ほど成績が低く見えることになります。
一方で、宿題が終わらない子や、内容が分からずに困っている子を支えることで、理解が深まることもある、とも書いています。宿題の手伝いそのものを悪いと言っているわけではありません。
手伝いを増やそうとした実験では
この論文には、親の宿題への関わりを増やそうとした研究も5本含まれています。親に宿題の見守り方を教えたり、親も参加する宿題を出したりして、成績がどう変わるかを比べたものです。
5本をまとめると、成績への効果は小さく、統計的にはっきりした効果とは言えませんでした(効果の大きさを表す数値 d が 0.21。著者は「わずかな効果」と書いています)。研究によっては、マイナスの結果が出たものもありました。
ここまでをまとめると、この論文からは、「宿題を手伝うと成績が下がる」とも、「宿題の手伝いを増やせば成績が上がる」とも言えない、ということになります。
著者は考察の終わりで、場合によっては親が宿題に直接関わることで、つまずいている子が助かることもある、としたうえで、いちばん大事そうなのは次のような支えだ、とまとめています。
- 子どもが、半分は自分で決めて動けるように支えること
- 勉強が自分の将来にどう役立つかを、分かるようにすること
- 学校で学んだことが、自分の興味や得意なこと、世の中の出来事とどうつながるかを、分かるようにすること
・3つの理由は著者があげている候補で、この論文の中で確かめられたものではありません。
・宿題の手伝いをほかの家での関わりと分けて調べたのは、結果を見たあとに加えた分析で、もとになった数字は6つです。
・「親の関わり」の測り方は研究ごとにばらばらで、決まった物差しがない、と著者も書いています。
・対象はおもにアメリカの中学生です。
うちでやっていること
研究と照らし合わせながら、私が親御さんにお願いしていることをまとめると、次の3つです。
・見ていただくのは、テストの点数がどうだったか、くらいで十分
・先回りして直さない(失敗は、本人のものにしておく)
教える役は、外に出す
宿題の手伝いは、研究でも、成績とのつながりがはっきりしない関わり方でした。少なくともこの論文からは、「親が宿題を手伝えば成績が上がる」とは言えません。
著者も、困っている子を支えることまで否定しているわけではありません。私が「教える役は外に出してしまうのも手」とお伝えしているのは、その役を、近い人ほど「なんで分からないの?」が出やすい親御さんではなく、外の人が引き受ければいい、と考えているからです。うちでは、勉強の中身と進め方は、私と生徒本人で決めています。
見ていただくのは、テストの点数くらいで十分
私自身も、勉強した時間や回数ではなく、演習やテストでいい点が取れるようになったかどうかで、力がついたかを見ています。親御さんに見ていただくのも、テストの点数がどうだったか、くらいで十分です。
先回りして直さない
子どもは経験が浅いぶん、自分で失敗してはじめて「じゃあ、どうする?」が出てきます。先回りして直してあげると、その機会そのものがなくなってしまいます。
ここでいう失敗は、目の前の1問をまちがえることではありません。テストで思うような点が取れなかった、というくらいの大きさのことです。そういうときは、「じゃあ、どうするか」を私が本人と話し合って、次のやり方を一緒に考えます。
研究の著者が、中学生の時期は自分の成功や失敗から学んで次に生かす力が伸びていく、と書いていたのも、同じ方向の話だと思っています。
「うちはこれです」があれば
「うちはこれです」というあるあるがあれば、お問い合わせから教えていただけたら嬉しいです。学年と今の状況が分かれば、そういうときにうちでどうしているかをお返しします。
参考文献
- Hill, N. E., & Tyson, D. F. (2009). Parental involvement in middle school: A meta-analytic assessment of the strategies that promote achievement. Developmental Psychology, 45(3), 740–763.(本文)
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