親子で勉強すると、だいたいこうなりませんか?

ひとつでも当てはまったら、それは相性の問題ではないと思っています。

教える役を引き受けると、「なんで分からないの?」が出てしまう

教える役を引き受けると、どうしても「なんで分からないの?」が出てしまいます。これは、近い人ほど出やすいところです。

うちが親御さんにお伝えしているのは、勉強の中身からは少し離れていただく、ということです。見ていただくのは、テストの点数がどうだったか、くらいで十分です。教える役のところだけ、外に出してしまうのも手だと思っていただけたらと思います。

私が指導でいちばん大事にしているのは、勉強するのは本人で、誰かにさせられるものではないということです。勉強は、親御さんのテストではありません(【指導の考え方①】でもお話ししました)。

この記事では、前回も紹介した研究を、今回は「宿題の手伝いは、なぜうまくいかないことがあるのか」という面から読み直して、そのうえで、私が親御さんにお願いしている線の引き方をお話しします。

研究:宿題の手伝いは、なぜうまくいかないことがあるのか

前回の記事で、アメリカの研究者ヒルとタイソンの研究を紹介しました。中学生(6〜8年生。日本の小学6年〜中学2年くらいの年齢)の親の関わりと成績の関係を調べた研究50本を集めて、まとめて分析したものです。

親の関わりは、全体としては成績とプラスの関係でした。ただ、宿題の手伝いだけは、成績とマイナスの関係でした(相関係数 −0.11。マイナスは「手伝っている家庭ほど成績が低い」という関係です)。ここでいう「宿題の手伝い」には、宿題を教えることだけでなく、宿題を見張ったり、チェックしたりすることも含まれています。

親の関わり方と成績の関係(相関係数)
横棒グラフ。親の関わり全体 +0.18、③学ぶ意味を伝える関わり +0.39(いちばん強い)、②学校での関わり +0.19、①家での関わり +0.03(ほぼ関係なし)。家での関わりのうち、本や教材を用意する・連れて行く など +0.12、宿題を手伝う −0.11(ただ一つのマイナス)。
出典:Hill & Tyson (2009) の分析結果から作図。前回の記事と同じ図です。

今回は同じ論文から、この結果を著者たちがどう考えているかを見ていきます。

中学生の時期は、親子の関係が変わっていく

著者は論文のはじめで、これまでの研究をもとに、中学生の時期をこう整理しています。

著者があげている、3つの理由の候補

著者は結果と考察の中で、宿題の手伝いが成績とマイナスの関係になりうる理由として、次の3つをあげています。

宿題の手伝いがマイナスになりうる理由(著者があげている候補)
① 子どもの自主性のじゃまになる
② 親のプレッシャーが強くなりすぎる
③ 親と学校とで、内容の教え方が違う

この研究は、親子の喧嘩そのものを調べたものではありません。それでも①と②は、冒頭にあげたあるあると重なるところがあるように思います。

著者は、もう一つの可能性もあげています。成績がふるわないから、親が宿題を手伝うようになる、という逆の向きです。そうだとすると、手伝いが成績を下げていなくても、手伝っている家庭ほど成績が低く見えることになります。

「手伝い」と「成績」の関係の、2つの見方
図。見方①:宿題を手伝う → 成績が低くなる? 見方②(逆の向き):成績がふるわない → 親が手伝うようになる。
相関を調べた研究では、どちらの向きなのかは決められません(著者)。

一方で、宿題が終わらない子や、内容が分からずに困っている子を支えることで、理解が深まることもある、とも書いています。宿題の手伝いそのものを悪いと言っているわけではありません。

手伝いを増やそうとした実験では

この論文には、親の宿題への関わりを増やそうとした研究も5本含まれています。親に宿題の見守り方を教えたり、親も参加する宿題を出したりして、成績がどう変わるかを比べたものです。

5本をまとめると、成績への効果は小さく、統計的にはっきりした効果とは言えませんでした(効果の大きさを表す数値 d が 0.21。著者は「わずかな効果」と書いています)。研究によっては、マイナスの結果が出たものもありました。

ここまでをまとめると、この論文からは、「宿題を手伝うと成績が下がる」とも、「宿題の手伝いを増やせば成績が上がる」とも言えない、ということになります。

著者は考察の終わりで、場合によっては親が宿題に直接関わることで、つまずいている子が助かることもある、としたうえで、いちばん大事そうなのは次のような支えだ、とまとめています。

読むときの注意
・「相関」を調べた研究なので、どちらが原因なのかは決められません。著者自身も「相関の研究で、原因と結果の向きを見分けようとしても無理だ」と書き、原因だと言い切らないよう気をつけた、としています。
・3つの理由は著者があげている候補で、この論文の中で確かめられたものではありません。
・宿題の手伝いをほかの家での関わりと分けて調べたのは、結果を見たあとに加えた分析で、もとになった数字は6つです。
・「親の関わり」の測り方は研究ごとにばらばらで、決まった物差しがない、と著者も書いています。
・対象はおもにアメリカの中学生です。

うちでやっていること

研究と照らし合わせながら、私が親御さんにお願いしていることをまとめると、次の3つです。

親御さんにお願いしていること
・勉強の中身からは、少し離れていただく(教える役は、外に出してしまう)
・見ていただくのは、テストの点数がどうだったか、くらいで十分
・先回りして直さない(失敗は、本人のものにしておく)

教える役は、外に出す

宿題の手伝いは、研究でも、成績とのつながりがはっきりしない関わり方でした。少なくともこの論文からは、「親が宿題を手伝えば成績が上がる」とは言えません。

著者も、困っている子を支えることまで否定しているわけではありません。私が「教える役は外に出してしまうのも手」とお伝えしているのは、その役を、近い人ほど「なんで分からないの?」が出やすい親御さんではなく、外の人が引き受ければいい、と考えているからです。うちでは、勉強の中身と進め方は、私と生徒本人で決めています。

見ていただくのは、テストの点数くらいで十分

私自身も、勉強した時間や回数ではなく、演習やテストでいい点が取れるようになったかどうかで、力がついたかを見ています。親御さんに見ていただくのも、テストの点数がどうだったか、くらいで十分です。

先回りして直さない

子どもは経験が浅いぶん、自分で失敗してはじめて「じゃあ、どうする?」が出てきます。先回りして直してあげると、その機会そのものがなくなってしまいます。

ここでいう失敗は、目の前の1問をまちがえることではありません。テストで思うような点が取れなかった、というくらいの大きさのことです。そういうときは、「じゃあ、どうするか」を私が本人と話し合って、次のやり方を一緒に考えます。

研究の著者が、中学生の時期は自分の成功や失敗から学んで次に生かす力が伸びていく、と書いていたのも、同じ方向の話だと思っています。

「うちはこれです」があれば

「うちはこれです」というあるあるがあれば、お問い合わせから教えていただけたら嬉しいです。学年と今の状況が分かれば、そういうときにうちでどうしているかをお返しします。

参考文献

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この記事を書いた人:六田 佳志(ろっく先生)

福岡の個人家庭教師・学習アプリ制作者。生徒の「どこでつまずいたか」を毎週の指導で見てきた実例をもとに、テストで実際に失点しやすいポイントだけを解説しています。指導実例はT君の合格ストーリー、プロフィール詳細は運営者情報へ。