テスト前の勉強、ワークを眺めて終わっていませんか?

点が取れない一番の理由は、自分を試していないことだと思っています。普段リフティングしかしていない子が、試合でいきなりシュートを決めようとしているようなものです。

答えを見て「なるほど」と納得しても、意外と解けないことが多いものです。テストで使える状態とは、問題を見た瞬間に解ける状態のことです(じっくり考える問題は別です)。そこまで来ているかどうかは、答えを隠して、何も見ずに解いてみないと分かりません。

ワークを眺める

答えを見ながら読み返すと、その場では「分かった」と思える。でも、何も見ずに解けるかどうかは分からないまま。

何も見ずに解けるかを試す

答えを隠して解くと、解けない問題がその場で分かる。間違えた問題だけ、もう一度。

これも私の感覚だけで言っていることではありません。この記事では、読み直すことと思い出すことを比べた実験と、テストのあとの答え合わせを調べた実験を紹介して、そのうえで、うちの生徒にやってもらっているテスト前のやり方をお話しします。

研究①:読み直すより、思い出すテストの方が1週間後に残った

アメリカの研究者ローディガーとカーピックは、大学生に短い説明文を覚えてもらう実験をしました。文章は、英語の試験(TOEFL)の対策本から取った「太陽」と「ラッコ」についての説明文です(英語で256語と275語)。

この実験での「テスト」は、文章を見ずに、覚えていることをできるだけ書き出すことです(言い回しや順番は気にしなくてかまいません)。答え合わせはありません。採点は、文章を30の内容のまとまりに分けて、そのうちいくつ書き出せたかで行いました。

実験2では、大学生180人を3つの組に分けて、1つの文章を4回に分けて学んでもらいました。

3つの組(読むのは1回5分、テストは1回10分)
組A:読む → 読む → 読む → 読む
組B:読む → 読む → 読む → テスト
組C:読む → テスト → テスト → テスト

そのあと、半分の人は5分後に、残りの半分は1週間後に、本番のテスト(文章を見ずに書き出す)を受けました。結果は次のとおりです。

5分後と1週間後に、書き出せた割合(実験2)
線のグラフ。5分後→1週間後に書き出せた割合は、組A(4回読む・読み通し14.2回)83%→40%、組B(3回読んで1回テスト・10.3回)78%→56%、組C(1回読んで3回テスト・3.4回)71%→61%。5分後は組Aがいちばん上、1週間後は組Cがいちばん上。
出典:Roediger & Karpicke (2006) の実験2から作図。5分後と1週間後は、それぞれ別の半分の人たちです。読み通した回数は、読む時間の中で文章を最後まで読んだ回数の平均です。

5分後のテストでは、たくさん読んだ組ほど成績がよく、組Aがいちばん上でした。ところが1週間後には順番が逆になり、組Cが61%、組Aが40%でした。組Cが文章を読み通した回数は平均3.4回で、組Aの14.2回の4分の1ほどです。それでも1週間後には、組Cの方がずっと多くを覚えていました。

大学生120人で行った実験1でも、同じ形になりました。2つの文章のうち一方を読み直し、もう一方をテストにして比べると、5分後は読み直しの方が上(読み直し81%・テスト75%)でしたが、2日後(54%・68%)と1週間後(42%・56%)は、テストした方が上でした。

もう一つ大事なのは、本人たちの予想です。実験2で「1週間後にどれくらい覚えていると思うか」を7段階で聞くと、4回とも読んだ組Aの予想がいちばん高く(組A 4.8・組B 4.2・組C 4.0)、実際には、その組Aが1週間後にいちばん覚えていませんでした。

著者は、読み直しはすぐあとの成績を上げるので学生に好まれやすく、学生は、すぐに出る手ごたえをもとに先の成績を予想してしまうのではないか、と書いています。ワークを眺めて「分かった」と思えるのも、同じことなのかもしれません。

読むときの注意
・5分後のテストでは、読み直した方が上でした。読んだ直後に確かめると、読み直しの方が「できている」ように見えます。テストした方が上になったのは、2日後と1週間後のテストです。
・ここでいう「テスト」は、読んだ文章を何も見ずに書き出すことで、問題を解き直す実験ではありません。
・組Bと組Cの1週間後の差(56%と61%)は小さく、はっきりした差とは言えませんでした。
・対象はアメリカの大学生で、覚えたのは短い説明文です。著者は、テストをうまく使えば小学校から大学まで役に立つだろう、としつつ、「少なくとも事実を中心に学ぶ授業では」と範囲をしぼって書いています。どんな条件で効果が出るのかは、まだ分かっていない、とも書いています。

研究②:テストのあとに答え合わせをすると、間違いが残りにくい

研究①のテストには、答え合わせがありませんでした。では、テストのあとに答え合わせをすると、どうなるのか。研究①の著者の一人ローディガーと、バトラーが調べています。

対象はアメリカの大学生72人です。歴史についての短い文章(12本)を使い、まず、文章を読まない組・1回読む組・1回読んで大事な文をもう一度読む組に分けました。そのあと全員が、選択式のテストを受けました。答え合わせのしかたは、問題ごとに3通りに分けています。

答え合わせの3通り
・答え合わせなし
・1問ごとに、すぐ答え合わせ
・テストが全部終わってから、まとめて答え合わせ(テストの直後に、その場で)

答え合わせでは、合っていたかどうか・問題・自分の答え・正しい答えが、10秒間表示されました。1週間後、同じ問題を、今度は選択肢なしで、答えを自分で思い出して入力する形でテストしました。

1週間後のテストで正解した割合(3つの組の平均)
縦棒グラフ。1週間後のテストで正解した割合は、最初のテストに出なかった問題 14%、テストに出たが答え合わせなし 31%、1問ごとにすぐ答え合わせ 45%、終わってからまとめて答え合わせ 56%。
出典:Butler & Roediger (2008) の表2から作図。3つの組(文章を読まない組・1回読む組・もう一度読む組)の平均です。

テストを受けただけでも、受けなかった問題より覚えていました(31%と14%)。そこに答え合わせを加えると、さらに上がりました。

逆に、答え合わせをしなかった問題では、テストで選んでしまった間違いの選択肢を、1週間後にもそのまま書いてしまうことが多くなりました。間違いの選択肢を書いてしまった割合は、答え合わせなしで24%。答え合わせをした問題(すぐ15%・まとめて14%)は、最初のテストに出なかった問題(16%)と同じくらいでした。しかも、答え合わせなしで書いてしまった間違いの75%は、最初のテストで自分が選んだ間違いの選択肢でした。

1週間後のテストで、最初のテストの間違いの選択肢を書いてしまった割合
縦棒グラフ。最初のテストの間違いの選択肢を1週間後に書いてしまった割合は、最初のテストに出なかった問題 16%、答え合わせなし 24%、すぐ答え合わせ 15%、まとめて答え合わせ 14%。
出典:Butler & Roediger (2008) の表3から作図(3つの組の平均)。「テストに出なかった」は、その選択肢を一度も見ていないのに、同じ間違いを書いた割合です。

試しっぱなしにすると、間違えた答えをそのまま覚えてしまうことがある、ということです。著者は、テストのあとには必ず答え合わせをすることを勧めています。

読むときの注意
・対象は大学生で、実験室で、歴史の文章に出てくる事実(短い答え)を覚える実験です。最初のテストは選択式でした。
・「まとめて答え合わせ」は、テストが終わってすぐ(同じ日)のことです。何日も何週間もあとの答え合わせは調べておらず、遅くなりすぎても効果があるかは、さらに研究が必要だと著者も書いています。
・著者は、もっと複雑な内容でも同じだろうと考えていますが、それを確かめるのはこれから、としています。

うちでやっていること:テスト前にやっていただきたいこと

テスト前にやっていただきたいことを、下にまとめました。

テスト前にやっていただきたいこと
流れの図。1 ワークは「習ったその日」に(テスト前に初めて解くと、テスト勉強が間に合わなくなりがち)→ 2 答えを隠して、何も見ずに解けるかを試す(目指すのは「見た瞬間に解ける」状態。じっくり考える問題は別)→ 3 間違えた問題だけ、もう一度(間違いが0になるまで繰り返す)→ 4 点数で確かめる(かけた時間ではなく)。

うちの生徒には「毎日でもテストするつもりで」と伝えています。

研究とあわせて、いくつか補足します。

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計算ドリルのテスト画面。正負の数(ひき算)の問題「(−7)−(−4)」に −2 と答えたところで、「こたえは −3」と表示されている

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参考文献

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この記事を書いた人:六田 佳志(ろっく先生)

福岡の個人家庭教師・学習アプリ制作者。生徒の「どこでつまずいたか」を毎週の指導で見てきた実例をもとに、テストで実際に失点しやすいポイントだけを解説しています。指導実例はT君の合格ストーリー、プロフィール詳細は運営者情報へ。