「公式は、とにかく覚えればいいんですか?」と聞かれることがあります。
丸暗記でも大丈夫な場合はあります。公式を使ってたくさん問題を解いていくうちに、その意味が分かってくる子もいます。
ただ、多くの子は、最初に「これはどういうことかな?」と考えた方がいいと思っています。公式で大事なのは、理由です。
この記事では、「やり方」から教わった子と「意味」から教わった子を比べた研究を紹介して、そのうえで、うちで公式をどう扱っているかをお話しします。
理由が分かっていれば、忘れても作り直せる
テストの最中に、公式を忘れてしまうことがあります。そんなときも、理由が分かっていれば、公式を使わずに解いたり、その場で公式を作り直したりできます。理由まで知っておくことが大事なのは、そのためでもあります。
たとえば、中学3年生で習う (x+3)² の展開です。(a+b)²=a²+2ab+b² という公式を忘れてしまっても、(x+3)² が (x+3)×(x+3) のことだと分かっていれば、1つずつかけて計算できます。
=x²+3x+3x+9
=x²+6x+9
よくある間違いは「x²+9」です。これも、数を入れてみれば、すぐに確かめられます。x=1 なら (1+3)²=16 ですが、1²+9=10 で、合いません。x²+6x+9 なら 1+6+9=16 で、合います。
数学では、こうして数を変えて、本当にそうなるかを自分で確かめてみることも大事にしています。
研究:「=」の意味だけを教わった子が、解き方を自分で作った
アメリカのヴァンダービルト大学のマシューズとリトル=ジョンソンは、算数の問題で、「やり方(解き方の手順)」を教わるのと、「意味(なぜそうなるのか)」を教わるのとで、子どもの学び方がどう違うかを調べました(2009年)。
使ったのは「8+7+3=8+□」のような問題
題材は、「8+7+3=8+□」のような、□に入る数を答える問題です。
「=」を「答えを書くところ」だと思っている子は、=の前までを全部たして「18」と書いたり、見えている数を全部たして「26」と書いたりします。正しい答えは、左側が 8+7+3=18 なので、右側の 8+□ も18になるように、□=10 です。
参加したのは、事前のテストで、この形の問題を半分までしか解けなかった、アメリカの小学2〜5年生40人です(6割の子は1問も解けませんでした)。2つの組に、くじで分けました。
「=」の意味を教わった組(19人):「=は、左側と右側が同じ量だという意味」ということを、5つの式の例で教わる。解き方は、一度も教わらない
・教わる時間は、どちらも約6分
・そのあと、どちらの組も6問を練習する(答えが合っているかは、その場で教わる)。さらに、ほかの子の答え(正しいものと間違ったもの)について、「どうやって出したのか」「なぜ正しいのか、なぜ間違っているのか」を説明する
・テストは、教わった直後と、約2週間後
結果:解く力は同じくらい。意味の理解は、意味を教わった組が上
「=」の意味を教わった組の子は、解き方を一度も教わっていないのに、自分で正しい解き方を作り出しました。そして、初めて見る形の問題(右側に同じ数がない問題、□が左側にある問題、ひき算が入った問題)にも、その解き方を使えました。
テストで正しい解き方を使えた問題の割合は、直後のテストで、意味を教わった組が86%、解き方を教わった組が83%でした。2週間後は78%と61%でしたが、著者の分析では、2つの組の解く力に、はっきりした差はありませんでした。
一方で、「=」の意味をどのくらい分かっているかのテストでは、意味を教わった組の方が、はっきりと上でした。
練習の途中の説明にも、差が出ました。
さらに、組に関係なく、理由で説明できた回数が多い子ほど、あとのテスト(練習と同じ形の問題・初めて見る形の問題・意味の理解)の点が高い、という関係も見られました。
著者は、どちらの組にも説明を求めたこの条件では、意味を教えるやり方の方が、解く力と理解の両方を伸ばしたので、手順を教えるやり方より効率がよかった、とまとめています。
・著者は、自分で思いつくのが難しい複雑な手順(たとえば、分数のわり算の「ひっくり返してかける」)は、手順を教える方がいい場合もあると書いています。また、手順をくり返し練習して慣れると、意味を考える余裕が生まれ、手順から教わった子も伸びるかもしれない、とも書いています。
・練習の途中では、解き方を教わった組の方が、正しい解き方を使えていました(99%と86%)。
・はじめの「=」の理解は、意味を教わった組の方が少し高かったので、著者はその差をそろえて分析しています。
うちでやっていること
・どうしてその式になるのかを、自分の言葉で説明してもらう
・数を入れて、本当にそうなるかを確かめてもらう
理由から入るのは、忘れたときに作り直せるように
研究で、意味を教わった子は、教わっていない解き方を自分で作り出しました。理由が分かっていれば、公式を忘れても、その場で作り直せる、という話と重なります。
説明できるかで、分かったかを確かめる
研究でも、理由で説明できた子ほど、あとのテストの点が高いという関係がありました。説明できるかどうかで「分かった」を確かめる話は、【指導の考え方④】「分かった?」の「うん」はあてにならないに書きました。
丸暗記がいけないわけではない
丸暗記でも大丈夫な場合はあります。公式を使ってたくさん解いていくうちに、意味が分かってくる子もいます。研究の著者も、自分で思いつくのが難しい手順は、手順から教えた方がいい場合もある、と書いています。
それでも、多くの子は、最初に「これはどういうことかな?」と考えた方がいい、というのが私の考えです。
公式を覚えているのに解けないときは
「公式は覚えているのに、問題になると使えない」「公式を忘れると、手が止まってしまう」というお子さんがいたら、学年と単元をお問い合わせから教えていただければ、うちでのやり方をお伝えします。
参考文献
- Matthews, P., & Rittle-Johnson, B. (2009). In pursuit of knowledge: Comparing self-explanations, concepts, and procedures as pedagogical tools. Journal of Experimental Child Psychology, 104(1), 1–21.(本文)
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