「分からない問題は、すぐに答えを見ていいんですか?」と聞かれることがあります。

私の答えはこうです。手が止まったら、まず書く。それでも道筋が見えなければ、答えを見ていい。ただし、見たら閉じて、何も見ずに解き直す。

「答えられないなら、考えても時間のむだでは?」と思う方もいるかもしれません。でも、答えられなくても、先に自分で答えようとした方が、あとでよく覚えていた、という研究があります。

この記事では、その研究を紹介して、そのうえで、うちでの答えの見方をお話しします。

手が止まったら、まず書く

分からない問題で手が止まったら、頭の中だけで考え続けずに、まず書きます。

書くのは、問題から分かっている事実と、自分の考えのかけらです。問題文のキーワードには、印をつけます。何かしら書くことが大事です。書き出し方は、【指導の考え方⑥】手が止まったら、まず書くにまとめました。

それでも道筋が見えなければ、答えを見ていい。答えられなかったとしても、先に答えようとした時間は、むだにはなりません。それを確かめた研究があります。

研究①:答えられない問題でも、先に答えようとした方が覚えていた

アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のコーネル、ヘイズ、ビョークは、「答えられない問題に答えようとするのは、学ぶじゃまになるのか、助けになるのか」を調べました(2009年)。

これを調べるのは、実は簡単ではありません。普通の問題では、答えられなかった問題は、もともと難しい問題に偏ってしまうからです。そこで著者たちは、誰も答えられない問題を使いました。

使った問題
実験1・2:作り話の雑学問題(「カルメット戦争を終わらせた和平条約は何?」のように、本当は答えのない問題)。本物の雑学問題に混ぜたので、参加した学生は作り話だと気づきませんでした
実験3〜6:つながりの弱い言葉の組(「池」→「カエル」のように、1つ目の言葉を見て2つ目を最初に思いつく人が約5%しかいない組)。たまたま当たった問題は、分析から外しました
比べた2つのやり方
先に答えようとする:問題だけを8秒見て、答えを考えて打ち込む → そのあと、問題と答えを5秒見る
一緒に見る:問題と答えを、はじめから一緒に見る
・そのあと、問題だけを見せて、答えを書いてもらうテストをしました

結果:答えられなかったのに、先に答えようとした方がよく覚えていた

作り話の雑学問題では、答えを見る時間をどちらも5秒にそろえた実験で、5分後のテストの正解は、先に答えようとした問題が41%、一緒に見た問題が31%でした。

全体の時間を13秒にそろえた実験(一緒に見る方は、答えを2倍以上長く見られます)では、32%と32%で、同じでした。答えを見ていた時間が半分以下でも、同じだけ覚えていたことになります。

つながりの弱い言葉の組では、全体の時間を13秒にそろえても、先に答えようとした方が、はっきりと覚えていました。

答えられなくても、先に答えようとした方が覚えていた
縦棒グラフ。つながりの弱い言葉の組を、全体の時間を13秒にそろえて覚えた。テストの正解の割合は、5分後のテスト(実験4)で、先に答えようとした問題67%、問題と答えを一緒に見た問題55%。約38時間後のテスト(実験5)で、47%と35%。
出典:Kornell, Hays & Bjork (2009) の実験4・5(本文 p.994〜995)から作図。先に答えようとした問題は、そのとき答えられなかったものだけで数えています。

学生を2つの組に分けて、それぞれ片方のやり方だけで覚えてもらった実験(実験6・84人)でも、69%と60%で、先に答えようとした組が上でした。

著者は、答えられなかった問題でも、答えようとしたことが学びを助けた、とまとめています。考えられる理由の1つとして、答えようとして関係のあることをあれこれ思い浮かべたことで、答えを見たときに覚えやすくなったのではないか、と書いています。ただし、そのあとに答えを見せることが欠かせない、とも書いています。

研究②:教科書のような文章でも、読む前に問題に答えようとした方が取れた

雑学や言葉の組ではなく、教科書のような文章でも、同じことが起きるのでしょうか。

カリフォルニア大学アーバイン校のリッチランドらは、脳の損傷で色が見えなくなる病気についての、2ページの文章を使って調べました(2009年)。参加したのは、アメリカの大学生です。

比べた2つのやり方
読む前に問題に答える組:文章に出てくる事柄についての問題5問に、2分で答える(分からなくても、全部に何か書く)→ そのあと、文章を8分読む
読むだけの組:文章を10分読む(全体の時間は同じ)
・最後に、10問のテストをする

読む前の問題は、多くが答えられませんでした(最初の実験では、95%が不正解)。分析は、読む前に答えられなかった問題だけで行っています。

結果:読む前に答えようとした問題は、あとのテストでよく取れた

最初の実験では、読んだ直後のテストで、読む前に問題に答えようとした事柄の正解は75%、読むだけの組は56%でした。

「大事な所に気づいたからでは?」という疑問に答えるため、両方の組の文章で、テストに出る所を斜体や太字にした実験もしましたが、差は残りました(71%と54%、82%と64%)。1週間後にテストした実験でも、55%と45%で、読む前に問題に答えた組が上でした。

最後の実験では、「読む前に問題を見るけれど、答えずに、問題文を覚えるだけ」の組もつくりました。

文章を読む前に、何をしたか
縦棒グラフ。文章を読んだ後のテストで、テストに出る所の正解の割合。読む前に問題に答えようとした組90%、読む前に問題文を覚えた(答えなかった)組78%、その分長く読んだ組63%。
出典:Richland, Kornell & Kao (2009) の実験5(本文 p.251)から作図。読む前に答えられた問題は、外して数えています。

問題を見て覚えるだけでも、ただ長く読むよりは取れました。それでも、実際に答えようとした組が、いちばん上でした。問題を見ておくことより、答えようとすることそのものに意味があった、というのが著者の見方です。

読むときの注意
・どちらの研究も、参加したのはアメリカの大学生です。中学生・高校生で確かめたものではありません。
・使ったのは、雑学の問題・言葉の組・1つの文章で、問われたのは、事実を答える問題です。数学の問題を解くときに同じことが言えるかは、この2つの研究では調べていません。
・どちらの研究でも、答えようとしたすぐ後に、答え(または答えの書いてある文章)を見ています。研究①の著者は、答えを見せることが欠かせないと書き、研究②の著者は、テストのあとに学び直す機会がなければ、答えられなかった問題にはほとんど役に立たないだろう、と書いています。
・研究②の著者は、学校の授業で同じ結果になるかは、これから確かめる必要があると書いています。

うちでやっていること

答えを見るときの順番
・手が止まったら、まず書く(分かっている事実・考えのかけら・キーワードに印)
・それでも道筋が見えなければ、答えを見ていい
・見たら閉じて、何も見ずに解き直す
・できなかったら、もう1回確認して、手を動かしながら1つずつ納得する

先に考えた時間は、むだにならない

研究では、答えられなかった問題でも、先に答えようとした方が、あとでよく覚えていました。すぐに答えを見ずに、まず書いて考えてから答えを見る、という順番は、この結果とも合っています。

答えだけ見て納得しても、意外と解けない

答えを読んで「なるほど」と思っても、自分で解けるとは限りません。説明できることが大前提で、必ず実戦で解けるかを確かめます。

答えを見たら閉じて、何も見ずに解き直す。できなかったら、もう1回確認して、手を動かしながら1つずつ納得していく。最後は、何にも頼らずに解けるところまで行きます。

自分で解けるかをテストで確かめる話は、【無料アプリ】英単語は「見るのは30秒、あとは全部テスト」に、説明できるかで「分かった」を確かめる話は、【指導の考え方④】「分かった?」の「うん」はあてにならないに書きました。

答えを写して終わりになっているときは

「答えを見ないと進めない」「答えを写して、丸をつけて終わりになっている」というお子さんがいたら、学年と教科をお問い合わせから教えていただければ、うちでのやり方をお伝えします。

参考文献

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この記事を書いた人:六田 佳志(ろっく先生)

福岡の個人家庭教師・学習アプリ制作者。生徒の「どこでつまずいたか」を毎週の指導で見てきた実例をもとに、テストで実際に失点しやすいポイントだけを解説しています。指導実例はT君の合格ストーリー、プロフィール詳細は運営者情報へ。